明日をつくるつながり

淡路島

 トンネルを抜けると、ぱっと目の前が明るくなり、白く大きな明石海峡大橋が姿を現します。本州から海の向こうの淡路島へ。橋から眼下に広がるのは、瀬戸内海。青い海に青い空。正面には、緑あふれる島。どこか素晴らしい場所に向かっている気がしてきます。

 淡路島の特産品は、玉ねぎやレタス、牛肉、魚介類など。食料自給率は、なんと300%を超し、人々が地に足を付けた生活をしていることが想像できます。車を走らせると、山と海の間には田畑や民家が連続する豊かな暮らしの風景が広がっていました。

 第一次産業に支えられてきた島は、昭和中期頃から、過疎化や高齢化、若者の島外流出、廃業、離農に悩まされ続けてきました。あたりをよく見ると空き家も点在し、閉校した学校もあります。でも、人々の表情をのぞいてみると、明るくいきいきとしているのです。

 島に暮らす人々との出会いから見えてきたのは、それぞれが日々の営みの中に楽しみを見つけ出して暮らしていること。中でも、「はたらく」という場においては、すでに淡路島にあるものを生かし、結びつけ、発展させながら、次々と新しい価値を生み出し続けています。

 その原動力のひとつに、2016年まで行われた、地域の雇用創出を目的とする厚生労働省の委託事業「淡路はたらくカタチ研究島」と、その後に民間へ継承された「ハタラボ島協同組合」の存在があります。

「淡路はたらくカタチ研究島」では、著名な経営者や実業家など、さまざまな講師によるセミナーが開かれ、年間で300人を超す参加者が時代の最先端の「考え方」や「働き方」に触れる機会となりました。4年の期間の中で、家業における独自商品の開発なども行われ、いまでは有名な特産品になっているものもあるそうです。

 そのDNAを受け継ぐ「ハタラボ島協同組合」では、はたらく力をつくる研修事業、はたらく場をつくるノマド事業、伝える力をつくる情報発信事業を行うことで、島内のはたらく場づくりを継続。みんながわくわく生きることを最大の喜びとして活動しています。

 美しい風景も、多様な特産品も、「自分らしく働き、暮らす」ために分かち合うもの。得意とする能力を持ち寄り、互いに助け合う。

 そこには、人間の本質に根ざした交流の姿がありました。

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