FEATURE | 明日をつくるつながり | 石巻

Common-Ship橋通り


お金を価値として考えない。「COMMON-SHIP橋通り」は新たなチャレンジが生まれる場所へ

 石巻駅から徒歩10分。大通りから一本入った道を歩いていると、赤い提灯が目に入ってきました。まるで、お祭りの屋台が並んでいるような、なんだか楽しそうな雰囲気。少し薄暗くなった頃、オレンジ色の光が灯ると次々と人が集まってきます。

 2015年にスタートした「橋通りCOMMON」は、石巻にお店を出す一歩目を応援する場所として誕生したチャレンジショップ。2017年に惜しまれながら閉場しましたが、地元の方の復活を望む声を受け、2018年に「Common-Ship橋通り」として生まれ変わりました。

 「Common-Ship橋通り」が生まれた背景や人との関わり方、そして石巻の人にとってどのような存在なのか。現在運営をされている「株式会社 街づくりまんぼう」さん、設計を手がけた勝邦義さん、そして実際にこちらで出店している方にお話をうかがい、それぞれのつながりを紐解いてゆきます。

文化的な活動が行われる部室。取材日は写真展が行われていた。

「橋通りCOMMON」から進化。新たな出会いの場としての機能がプラスされた

 まずお話を伺ったのは、「株式会社街づくりまんぼう」の三浦さん。インターネットで得た情報からキッチンコンテナが集まる飲み屋街をイメージしていましたが、実際に訪れてみると、敷地内にはお店以外にも小さなステージやギャラリーなどが設置されていました。

 お話を聞いてみると、前回の「橋通りCOMMON」のときに住民が集まって文化的な活動が活発になり、それらの団体が発表できるような場を設けたとのこと。現在では短歌部や剣玉部など14もの「部活動」が活動しているそうです。剣玉部の部長は、なんと紅白歌合戦に出演したというのだから、驚きです。

ステージは部活動の発表や、バンド演奏などにも使われる。

 三浦さんは「Common-Ship橋通り」を「雑多な場所」と表現し、その魅力を熱く語ります。
「ここに来たら必ず誰かがいて、知らない人とも友達になれます。石巻は出会いの場が少ないので、人が集まりやすい場所ができたことによって音楽やアートを楽しむ人が増え、違うジャンルとのつながりが出来上がっていきました」
 つまり、石巻の人にとって「Common-Ship橋通り」が新たな出会いの場所として機能してきているようです。

 東日本大震災後に多くのボランティアが石巻を訪れ、町の再建に携わりました。その波が落ち着いた頃、地元の方から「みんなでワイワイできる場所がほしい」「こんなイベントをやってみたい」と自発的な意見が上がるようになり、それらのアイデアを実行できる場所としてぴったりだったのが、ここ「Common-Ship橋通り」だったのです。
「この場所は、街の人たちによって作られています。自分たちが動かしていかなければいけない場所でもあるから、楽しみながらもみんな真剣に考えているんです」

若者が集まり、新たな活動が生まれる場所をつくりたい

 横浜の設計事務所で働いていた建築家の勝邦義さんは、事務所が「橋通りCOMMON」の立ち上げに関わっていたことをきっかけに、街づくりまんぼうから施設の改築やデザインに携わってほしいと声をかけられました。
 手がける上で意識したのは「店主さんたちが、工夫しながら町づくりをしやすい空間作り」。お店の周りに可変的なフレームを入れて、店主のアイディア次第で自由に変えられるような装置を加えているそうです。

 「Common-Ship橋通り」はチャレンジできる場所であり、「部活動」のような新しい何かを生み出すことを応援している場所。以前と比べ、その活動はさらにやりやすくなったのでは、と勝さんは語ります。20〜30代くらいが多く訪れるそうですが、驚くことに最近は高校生も集まるのだとか。
「若者が集まる場所がない現状も、石巻の課題。電車も頻繁に走っているわけではないので、まちなかでの滞在時間をどう過ごすかが課題ですね」

 石巻のバージョンアップを目的とした一般社団法人「ISHINOMAKI2.0」の活動にも参加している勝さんは、石巻の魅力を「多種多様な面白い人に出会えるところ」と表現。
「ISHINOMAKI2.0の活動を始めたいと思ったのは、石巻でいろんな活動を立ち上げている、都会では会えないような人たちとの出会いに魅力を感じたからでした」
 実際に勝さんは、空き家の改修を行う「合同会社巻組」さんと家の改装で関わったり、油井元太郎さんが手がけるモリウミアスの校舎にも携わったりしています。

勝邦義

勝さんはオープンシェアオフィス「IRORI石巻」も手がけた。

「IRORI石巻」に併設されたカフェではVillage AOYAが作る「巻風エール」も販売。

 「飲食店ブースで食事を楽しんでもらうのはもちろん、集まった人たちによるいろんな活動が起こるきっかけになってほしいと思っています。石巻に人を呼び込んで、この街の魅力を知ることができるような拠点を作れたらと思います」
と、今後の目標を語ってくれました。

若者と交流できる貴重な機会。メニュー考案の意欲も増すようになった

 提灯が灯り始めた夕方、「Common-Ship橋通り」に店を構える「鉄板です WHITE」を尋ねると、お店を運営する千葉さんご夫妻がこの場所の魅力を楽しそうに語ってくれました。
「橋通りCOMMONの頃に色々な方と知り合うことができて、またお会いしたい気持ちが強かったんです。こういうところでお店を出さないと、若い方たちと接触する機会が掴めないですからね」

 通常、店主と若者が知り合うチャンスは少ないですが、「おはようございます」「今度遊びに行きます!」などと、若者たちの方から声をかけてもらえるのだとか。その影響もあってか、新しいメニューも試行錯誤するようになったといい「ここで終わるのももったいない。若い人たちに負けていられないですね」と笑顔を見せました。

夕方、提灯の明かりがつくと自然と人が集まってくる。

 この場所に関わるさまざまな人に話を伺うことで、「Common-Ship橋通り」が街の人によって作られ、人が集まり新しいことを始める「チャレンジ」の場となっていることが見えてきました。

 「街づくりまんぼう」の三浦さんは、“人と人とのつながり”とは決してお金のやりとりだけではないと語ります。形の有る無しにかかわらず、モノで互いに互いを協力し支え合うことが一番ベストな形。
「確かにお金がないとできないけれど、そのお金を価値として考えずに、自分にプラスになることを互いにやりとりして、進んでいくのが一番理想的な人と人とのつながりだと思います」

 これからもっとたくさんの人に訪れてほしいと、現在進行中である新しい企画を楽しそうに話してくれた三浦さん。町から愛される「Common-Ship橋通り」ではまた新たな出会いが生まれ、チャレンジが始まっていくことでしょう。


■ Common-Ship橋通り(コモンシップはしどおり)

2015年4月石巻に移住し飲食店を開業したいと考える人たちのチャレンジショップとして2年半の期間限定でオープン。イベントを企画する側、参加する側という関係性を超えて、地域の人々がともに通りをステージにイベントを作りあげていくほどの賑わいをみせた。2017年橋通りCOMMONは閉場したが、継続を望む声に応え「株式会社街づくりまんぼう」が運営を引き継ぐ形で2018年に復活、Common-Ship橋通りがオープン。飲食だけではなくステージや展示ブースも設けてあり、より活気あふれる石巻の拠点へと進化を遂げた。新しいことにチャレンジする人たちの大きなプラットフォームとなっている。
Facebook:https://www.facebook.com/commonship.hashidori/
株式会社街づくりまんぼう:http://www.man-bow.com/

■ 勝邦義(かつ くによし)

1982年名古屋生まれ。2007年東京工業大学卒業。2009年ベルラーへ・インスティチュート(オランダ)修了。山本理顕設計工場、オンデザインを経て、2016年勝邦義建築設計事務所を設立。ISHINOMAKI2.0理事。
2012年グッドデザイン復興デザイン賞/ISHINOMAKI2.0,石巻VOICE
2014年SDレビュー2014入選/雄勝桑浜小再生プロジェクト*(オンデザイン在籍時)
Common-Ship橋通りの設計を担当。
勝邦義建築設計事務所:http://katsustudio.jp/