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明日をつくるつながり
国分寺

 東京のJR中央線沿いにある、国分寺駅。農業が盛んな町と聞いていたが、改札を抜けると駅構内は立派な商業施設で賑わっており、近くにはタワーマンションや飲食の有名チェーン店が並びます。初めてその地を訪れてみると、新しく開発されたきれいな町といった印象で、周辺で農業が行われているようには見えません。
 しかし、駅を出て少し歩けば、思わず立ち寄ってしまいたくなるような雰囲気の良いカフェや喫茶店が目に入ります。そして住宅街を抜けると、都内とは思えないようなのどかな田畑が広がっていました。

 ここ国分寺では、国分寺市内を中心とした約30の参加店舗と、市民同士で使える地域通貨「ぶんじ」が流通しています。使用する際には、裏に相手へ「ありがとう」のメッセージを書くことが約束となっており、単なる通貨ではなく気持ちを伝えるコミュニケーションツールの1つとして使われ、感謝の気持ちが循環するようになっています。
 「ぶんじ」を入手する方法は、まちやまわりの人たちのために汗をかくこと。地域でのボランティア活動に参加することでも手に入ります。お店では、100ぶんじ=100円相当として使うことができますが、メッセージを添えて使うことから、感覚としては割引券とは違った使い心地になるといいます。
 「ぶんじ」は、日本円というものさしだけでは捉えられない、目に見えない気持ちのやり取り、人との関係性を大切にしています。

 少し前に地域通貨ブームが起こり、さまざまな地域で取り入れられましたが、継続するのは難しく今まで続いているものはそう多くありません。「ぶんじ」は他の地域通貨とは異なった運用を行うことで、今でも多くの地域の方に利用されています。
 ぶんじの仕組みを立ち上げた創設メンバー、町のイベントでぶんじを使う利用者、そしてぶんじをきっかけに新しい道を見つけた人。誰もが、国分寺にはほどよい距離感のつながりがあり、お互いがちょうどよく重なり合っていると、口にします。

 なぜ、「ぶんじ」は地域の人に愛され、ここまで続いてきたのでしょうか? ぶんじに関わる人、ぶんじを通じたやり取りの軌跡を辿っていくと、地域通貨によって生まれたつながり、そして本来あるべき人と人との関係性について、見えてきました。

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