

明日をつくるつながり
「人の生き方は一つじゃない」と印象的なメッセージを伝えてくださったのは
“自分らしく自由に自立して生きる女性たちへ”をメッセージに掲げる女性向けメディア「OTONA SALONE」を立ち上げた浅見悦子さん(以下、浅見さん)。浅見さんは、雑誌や書籍などの編集者として25年以上のキャリアを誇り、誰もが自分らしく暮らせる環境づくりに向けて多くの活動を続けられています。
今回は、浅見さんご自身の働き方に対する考え方やライフステージにおける悩みに対する向き合い方についてお話をお聞きしました。
終身雇用が当たり前だった昔と違い、転職する方の増加や、女性の活躍推進も進むなど、働く環境は以前と比べて大きく変化しています。しかし浅見さんは「女性管理職を増やすことが女性の活躍推進につながることなのかどうかは、言い切れない部分もあります」と語ります。
「管理職に女性が増えることで、女性特有の悩みを上層部の方にも伝えやすくなるというメリットはあると思います。ですが、女性の活躍推進を目指す目的としては、働く女性の数や管理職に就く女性を増やすだけではなく、性別問わずフラットに評価をしてもらえて、能力のある人が昇進していける環境づくりをすることだと考えています」
さらに浅見さんは、あらゆる状況の人にとって働きやすい環境をつくるためにはライフスタイルに合う働き方を考えることが大切といいます。
「理想は、あらゆる方のライフスタイルに合わせた働き方ができるといいと思います。たとえば、働きながら子育てをされている方の場合、『忙しい時間帯は業務を一時離れるかわりに、余裕のある時間には集中して仕事をおこなう』というスタイルなら働きやすい、ということがあります。画一的な就業時間での管理だけではなく、いつまでにやっておくという『タスク』をベースにした働き方ができると仕事を続けやすい方も多いと思います。人それぞれのライフスタイルがあるのと同様に、それぞれにあった働き方ができるような制度が整えば、働きやすい環境は自然と生まれてくるのではないでしょうか」
一人ひとりそれぞれのライフスタイルが存在するように、一人ひとりに合った働き方ができる環境づくりが、その人らしく暮らしていく上で必要なのだとわかります。
浅見さんが立ち上げた「OTONA SALONE」では、現在アフタヌーンエイジプロジェクトを開始。「アフタヌーンエイジ」の名前の由来は、日本人女性の平均寿命である88歳を24時間に例える「人生時計」をもとにしたときに「アフタヌーンブレイク」の時間帯にあたる「更年期」と呼ばれる45~55歳の年代の方を指す名称だそうです。
もともと「OTONA SALONE」は、大人の女性のサローネ=サロン=集まりを作りたいと思ってスタートしたそう。大人の女性が直面する、なかなか人には共有しづらいことを話せるようなカフェのような場所を作りたいという想いのもと。そのうちの一つが更年期で、アフタヌーンエイジプロジェクトは、更年期についての情報やサポートについてシェアすることとで、不安やネガティブなことを払拭できたらというのが活動のねらいといいます。
「アフタヌーンエイジProject」のページ。「私たちの更年期をたのしい10年に」というテーマで、更年期の持つネガティブなイメージを変える活動をはじめました。
ミドル世代の大人になると、誰もが抱える悩みであるにも関わらず、話題にしづらいと考えられてしまうようです。その理由として、これは自分だけに起こっていることなのか、誰もが同じ想いをしているのかわからない人たちが多くいると浅見さんは指摘します。そう考える人たちにとって、同じ悩みを共有できる場があることは大きな励みになるのでしょう。
そんな「OTONA SALONE」にまつわるお話しを聞いていると、浅見さんご自身のご経験が、その立ち上げのヒントになっていると感じます。
「私は就職する前に、雑誌などのメディアから得た情報で、抱えた悩みが解決したり心が軽くなったりする経験がありました。その経験から、誰かの悩みを軽くしたり、助けになるようなことをしたいという想いを持つようになりました。最初に配属されたのが“健康”にまつわる雑誌の編集チームでした。
そして、その雑誌で私が編集を担当した記事を読んだ方から、感謝のお手紙が届いたことがありました。その時は自分の情報が誰かの助けになるということがわかって本当に嬉しかったのです」
浅見さんご自身も困った際に何かに頼って救われた経験とともに、情報を発信することで、誰かの支えになった実感を得たからこそ、誰かと情報をシェアすることの大切さを理解されているのだと感じます。
「自身の経験や想いを発信した例は他にもあります。『OTONA SALONE』で連載していた『40代編集長の婚活記』の記事ですが、これも当時はあまりメジャーではなかった40代の婚活をテーマにすることで、いろいろな考え方の人から反響がありました。実はひっそりと婚活していた人が『私も婚活しています』と名乗り出てくれたり、『相談がしたいです』など、この記事を通して声をかけられる機会が増え、交友の幅も広がりました」
浅見さんの婚活コラムをまとめた「40代ご無沙汰女子の、ざんねんな婚活」「恋ができない40代が運命の人をみつける17の方法」は、男女問わず大きな反響を集めました。
このように、本当はだれかに話したい悩みを抱えているけれど、周りに話せる人がいない方にとって、同じ悩みを抱えている方がいると知ることができることは大きな助けにつながるのです。
たくさんの人の共感を集め、人々の支えとなるプロジェクトを立ち上げられている浅見さんですが、どのようなことを心がけて活動されているのでしょうか。
「以前、仕事を頑張りすぎて心が疲れてしまったことがありました。その時に自分がなぜ落ち込むのか考えたところ、コミュニケーションに課題があったのだと気付きました。
一緒に仕事をしている相手に良く思われたいと思うあまり、自分が伝えたいことよりも、相手が望む言葉を常に探しながら話していました。でも本質的ではない会話が続くことがストレスになり、心が疲れてしまったのです。ですから今は、言い方に配慮しつつ、自分が伝えたいことをできるだけストレートに伝えるようにしています」
いろんな課題や悩みを抱える方に向けて情報を発信し、悩みをシェアできる環境や、同じ想いを抱える人が集まることができる場づくりに向けて活動されている背景には、自身の想いを素直に伝えることの大切さを心がけていることがわかります。
「私はSNSやメディアで自ら情報を発信したり、想いを伝えることで、読んだ方に反応をいただけるととてもやりがいを感じますし、私自身も救われています。しかし中には発信することが苦手な方々もいます。そういう方々がもし、悩みを抱えてしまう場合は、同じ悩みを持つ方を探してみたり、想いを紙に書くでもいいので、自分の中に溜めこまないことが大切だと考えています。私も過去、話せる相手がいない時にお気に入りのぬいぐるみに話を聞いてもらうこともありました」と気さくにお話しいただけました。
「自分らしく自由に自立して生きる女性たちへ」というメッセージを基に活動を続けられている浅見さん。浅見さんのお話を聞いてみて、一人ひとりに合った働き方や、ライフスタイルにおける悩みへの向き合い方についてご自身が直面した過去があったこと。そして、その直面した経験をテーマにあらゆる情報を発信することで誰かの救いになりたいという想いは、「自分らしく生き生き」と暮らしていきたいと考える人たちがつながる場を生み、また別の誰かの救いにつながる活動になっていると強く感じました。
コラムニスト・編集者。主婦の友社ウェルネス事業部部長、元S Cawaii!編集長。自身の婚活奮闘記をまとめた著書「40代ご無沙汰女子の、ざんねんな婚活」が大きな話題に。
https://otonasalone.jp/