明日をつくるつながり|新しい生活様式の中で
淡路島

FEATURE | 明日をつくるつながり | 新しい生活様式の中で

淡路島


いまは待つ時。ハタラボ島協同組合は機会が来るまで低燃費飛行を続けます。

「こんにちは!」
「ご無沙汰しています。お元気ですか?」

 パソコンのモニタに映し出されたのは、ハタラボ島協同組合の富田祐介さん、やまぐちくにこさん、高木恵美さん。穏やかな笑顔を見ていると、この騒ぎは淡路島で無縁なのかな?と勘違いしてしまいそう。でも、淡路島も例外ではなく、時代の変化に直面していました。

 まず気になったのは、三名が在籍しているハタラボ島協同組合と、運営しているノマド村の様子。特にカフェノマドは、いつもなら4月に営業を開始しているはずですが、5月末までと8月中は休業することを選んだそうです。

富田「実はノマド村運営者の中で、カフェの営業断念の影響を最も受けたのは私の妻です。カフェ担当なので、メニューをつくり、どうお客様をおもてなしするかを生きがいのように考えていました。休業を決めたときには、かなり落ち込んでいました」

 でも、そこでおしまいにならないのが富田さんの奥様。なんと、数日後には「淡路島に行った気分になれるセット」という地場産の食材や加工品などを詰め合わせたセットをオンラインで販売し始めたのです。

富田「始める!と決意してからはトントン拍子。島に移住してきてから築いた人脈を活かして多方面の協力を得て、デザインや販売の導線に至るまでのすべてをあっというまに構築していました。身内の話で恐縮ですが、驚かされるとともに影響を受けました。私自身、年内にハタラボ島協同組合で行う予定だった企業研修が全て中止になってしまいましたが、気落ちしている場合ではないと気付かされました」

 それぞれで独自の事業を運営し、そこで得た知見やつながりを持ち寄る場となっているハタラボ島協同組合。その活動は、現在どのようになっていて、これから先のことをどう考えているのでしょうか。

久々にZOOMにてお会いした皆さまは、前回取材時と同様温かく取材陣を迎えてくれました。

富田「実は今日、久しぶりにこの3人で会議をしました。今年のメインストリームだった企業研修が止まったことで、いったんはそれぞれが運営している事業に注力しようと話していたからです。
 ハタラボの良いところは、いつも集まって目標を掲げているのではなく、自然とつながって生まれたプロジェクトをその時々で動かしていける自由度。コロナ禍で大変な時は低燃費飛行で運営していますし、動きが出てきたら集結してアイデアを加速させていけばよいだけですから」

 人が集まるほどに、意見はまとめづらくなります。でも、ハタラボ島協同組合のみなさんは、深く長くつながってきたことで、信頼関係がすでに醸成されていました。「いまはゆっくりでいいんじゃない?」というタイミングも、おおよそ合致していたそうです。

変わったことと変わらなかったこと。それぞれの春と夏があった。

 では、各自の事業や新型コロナウイルスに対する対応はどのようなものだったのでしょうか。まずは、アートを軸に活動をしている、やまぐちくにこさんに伺いました。

やまぐち「ワークショップなどの公的なイベントは、すべて2月の段階で中止を決定しました。個人的な活動で3月末まで百貨店の催事で大阪に滞在していたのですが、どんどん深刻な事態に。百貨店の営業時間は縮小され、人もこなくなってしまいました。
 催事を終えた後は急いで淡路島に帰り、自主的に2週間の隔離生活をしました。周囲の大切な方に感染させてしまう万が一のことを考えたからです。でも、久しぶりに自分の時間がたくさんある状態になり、振り返ってみると不自由をかなり楽しんでいたのかも」

 笑顔で話すやまぐちさんですが、主な活動が対面型のイベントということもあり、多くの活動は休止したまま。「イベント開催には責任が伴います。だから、自己判断だけで進められないもどかしさがある」と話します。
 続いて、認可外保育施設の「森のようちえんまんまる」を立ち上げ、学習塾も開業した高木さんにも現在の状況について伺いました。

高木「森のようちえんは、保育者と保護者で話し合いながら運営しています。4月にコロナについて感じていることや意見を出し合った結果、それぞれ状況も考え方も違うことがわかりました。島外との関わりがある人は自主的に休むなど最終的にはリスクを避ける方向に。学習塾は、保護者の方々の意見を聞きながら柔軟に対応しています」

高木「振り返ってみて大切だったのは、話し合いだった」と話す高木さん。自分だけではなく、相手も家族も地域も関わること。話して、聞く。その繰り返しが、互いの理解につながっていったそうです。
 地域の人々をお客様としている高木さんに対して、島外と島内を結びつける活動をしている富田さん。現状について話していだたきました。

ノマド村ではパーマカルチャー講座でスパイラルガーデン作りを実施。淡路島ならではの空気を感じます。

富田「たくさんのイベントや研修が中止になり、経営は大変です。特に今年はインバウンドのコンテンツをたくさん用意してきたので、影響はとても大きかった。でも、私が運営しているシマトワークスのメンバー全員が、ピンチはチャンスという意識を持っています。 特にこれまでのインバウンド業界では淡路島は遅れをとっていました。でも、世間が止まっている間にしっかりと準備をして、後発の私たちでも追いついていきたいと考えています。」

 前回お会いした時に、「(自分が移住してきたばかりの頃は)どうして淡路島の人たちはピンチの時でも、人生を楽しんでいる雰囲気なんだろうと思った」と話していた富田さん。「自転車操業に近いですが、次に起こる化学反応を楽しみにしているんです」と、いまではすっかり「島の人」になって、人生を楽しんでいるようです。

当たり前のことを当たり前にしていく。未来はその歩みから生まれるもの。

 近畿一円はもちろん、日本国内でも有数の観光スポットの淡路島。今年の島の様子に変化はあったのでしょうか。

高木「自粛期間だった4月も、かなり島外の人が来ていたため、島の人たちは不安を感じていました。自粛が解禁されてからは、さらに人が来るようになりました。夏休みやGOTOキャンペーンの影響はとても大きいと感じています」

富田「宿泊と食事の施設はオープンしていますが、観光施設は時短営業で海水浴場も閉鎖の状況。それでも、車で行ける上に感染者が少ないことで、人気が高まっているのだと思います」

 本来ならこれらの訪問者は、島内で事業を営む多くの人にとってお客様。でも、この特殊な状況下では、素通りしていくだけの存在ともいえます。それでも、淡路島のファンを地道に増やしていくことが、未来を生み出すこともひとつの事実。それぞれに、思い描く未来について伺いました。

高木「実はこうなる少し前から、より地域の身近な仕事を意識して動いていました。学習塾を開いたのもその一環です。自粛期間があけて、さまざまな地域の人から仕事を含めて声をかけていただきました。これからも、より地域を深掘りしていく方針です」

「Awajishima Sodatete Market」の情報をYouTubeで発信しはじめたやまぐちさんたちスタッフ。

やまぐち「イベントやマーケットを開催できない状況を受け入れ、YouTubeチャンネルに力を入れていきます。そのために専門家を交え映像編集の時間をスタッフ間でとるようになってきました。
 この社会変化があり、身近なことに視点が向いてきたと感じています。たとえば、レジ袋が廃止されましたが、それを市の指定のゴミ袋にすれば環境問題の課題解決になるのではないかというアイデアが湧いてきました。アートでなく環境に対する意識が出てきたのは、自分自身でも意外です」

富田「インバウンドのコンテンツを強くしていくことと並行して、ワーケーションについて事業を構築しているところです。
 私自身が年に1か月ほど海外に滞在し、リモートで仕事をするという実験をずっと繰り返してきました。また、神戸~淡路島で7年間デュアルライフを送ってきたメンバーもいます。昨年からその経験を活かして企業とコラボレーションしてきたのです。折しも、リモートワーク疲れという言葉が出てきている時代ですし、先行着手している領域ですからチャンスと感じています。実は、すでに受け入れ予告のWebサイトもできているんですよ」

ワーケーションは新型コロナ蔓延で注目される以前から温めていたプラン。

 オフィスは会社が主導して働きやすい空間をつくった場所。しかし、時代の流れの中で、個人が働く環境やルールを構築していくようになったと富田さんは話します。豊かな自然に囲まれた淡路島は、まさにうってつけの場。本社機能を移す企業も出始めるなど、淡路島はワークライフバランスを模索する最先端の場になりそうな予感がします。

 富田さんは、自身が体験してきたことを次のように話しています。

富田「海外に身を置くことで、いろんな人との関係性が良い意味で遠くなり、普段はなおざりになりそうな自らや家族についての考えが深くなりました。いざ好きな飲み会などがなくなってみると、生活のリズムができて、心身のメンテナンスができていたのです」

 24時間、365日。時は誰にでも等しく流れていきます。それは、世界規模で環境の変化が起こっていても不変のもの。たとえ方法論は変わっても、心身を健康に保ち、多くの人と有機的につながる中で新しい価値観を生んでいく。「生きる」「働く」という基本に変化はないのかもしれません。

ワーケーションのコンテンツとしても整備を進めている体験農園「farm studio」。

●前回取材記事「ハタラボ島協同組合 富田祐介さん」はこちらからご覧いただけます。

●前回取材記事「ハタラボ島協同組合 やまぐちくにこさん」はこちらからご覧いただけます。

●前回取材記事「ハタラボ島協同組合 高木恵美さん」はこちらからご覧いただけます。


■ 富田祐介(とみた ゆうすけ)

1981年、兵庫県神戸市生まれ。大学卒業後、2年間フリーランスの設計士として神戸・淡路島で活動。2007年より東京に移住し日建設計グループへ入社。2012年に淡路島へ移住し「淡路はたらくカタチ研究島」事務局立上げ・運営。本業を建築から企画に変更し2014年 シマトワークスとして独立。「わくわくする明日をこの島から」をモットーに、島を拠点に地域、分野、個人・団体・行政・企業問わず幅広く企画提案を行い、法人化を経て現在に至る。2016年「淡路はたらくカタチ研究島」を継承するかたちで仲間と共に「ハタラボ島協同組合」立上げ、こちらでも活動を行っている。
現在は「workation.life」を立ち上げ、ワーケーション事業に力を入れている。
workation.life:https://workation.life/

■ やまぐちくにこ

1969年、淡路島生まれ。高校卒業後、約4年間島外で暮らしたのちUターン。「『淡路島が嫌い』でも、島に暮らさねばならないならば、新しいことにチャレンジできる土壌を島の中につくりたい」という理念の元、「淡路島を耕す女」と称し機能的な立ち位置を模索。現在、ファンクションキーを意味する「Fkeys+(エフキー)」という屋号を立ち上げ、行政事業のブランディングや他地域の文化政策などにも携わりながら、島との関わりかたを探求している。
現在はAwajishima Sodatete Marketのスタッフとして積極的に活動中。
Awajishima Sodatete Market:https://www.sodatetemarket.org

■ 高木恵美(たかぎ えみ)

1976年、神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、6年間内装設計事務所に勤務したのちIT会社へ転職、ウェブ企画・ディレクションを担当する。2010年、結婚を機に香川へ移住。フリーランスでウェブ制作を始める。2011年、自主保育サークルに出会い、子どもたちと自然の中で過ごす豊かさを体感し、こどもえん立ち上げに携わる。2015年より淡路島に移住し「森のようちえんまんまるin淡路島マンモス」を友人と始める。2016年にハタラボ島協同組合を立ち上げる。

バックナンバー

淡路島 国分寺 石巻